花組トップスター・明日海りおさんが2019年11月24日、惜しまれつつ宝塚を退団されました。
宝塚に残した数々の軌跡は、宝塚にとってもわたしたちファンにとっても大きなものだったと言えるでしょう。
今回は、そんな明日海さんが宝塚に…、そしたファンの心に遺したもの…は何だったのか?
さらに、「トップオブトップ」という表現をされることが多かった明日海さんですが、その理由と明日海さんの魅力、宝塚に遺したものについても考えてみようと思います。
さっそく始めましょう!
目次
宝塚のトップオブトップとは?
ここ数年、目にすることが増えたような【トップオブトップ】という表現。
一体何なのでしょう?
先に結論を言うと、実はこの「トップオブトップ」という表現、特定の誰かを指す表現ではありません。
5組のトップスターは平等という大前提がある宝塚ではありますが、その中でもとりわけ特別感の強いトップさんを指して使われることが多い傾向にあります。
実はこの呼び方、ファンの中で好き嫌いが分かれる表現ですね。
しかし、ある程度根付いている表現であり【トップオブトップ】と言われることが多いのは…
◆絶大な人気を誇るトップスター
◆在任期間が一般的な3年より長いトップスター
◆武道館やアリーナなどでコンサートを行うトップスター
◆雪組トップスターを経て、現在も専科で活躍する轟悠さん
このいずれかの条件を満たしているトップさんよく使われれる傾向があります。
「トップオブトップ」は、轟悠さんが雪組トップスターから専科へ異動し、各組に主演として出演し始めたあたりから、よく見るようになったようにも思いますが、宝塚がこのような表現をしているわけではなく、おそらくメディアが作った表現ではないでしょうか。
明日海りおはトップオブトップなのか?
好き嫌いが分かれるとは言いつつも、近年では、明日海りおさんがトップオブトップと表現されることが多かったのは事実です。
あくまで「トップスターは平等」という前提の上ですが、明日海さんがトップオブトップと言われる理由は以下のように考えられます。
◆ファンの多さ
◆トップスター在任期間
◆歌・ダンス・芝居の質と宝塚らしい男役像
◆準トップ時代
◆横浜アリーナでのコンサート
◆千秋楽に劇場に集まった人数とライブ中継 など
1つずつ見ていきましょう。
明日海りおはファンの多さがすごい!
明日海さんの人気は絶大なものでした。
下級生時代から舞台でも目を惹く美貌と中性的な魅力でファンは多かったように思います。
さらに、学年が上がるにつれ、ますます磨きがかかる歌、ダンス、芝居のクオリティ、さらには男役の姿と素のかわいらしい姿のギャップに魅了され、ファンの数は右肩上がりに増えていきました。
ファンクラブ主催のお茶会の参加人数は数千人規模だったと考えられます。
お茶会なのに会場が広すぎて、オペラグラス必須という声をよく耳にしました。
もちろん、お茶会に参加しているのは、明日海さんのファンの中でも一部でしょうから、日本全国はもとより人気の高い台湾などのファンも合わせたら、一体どれだけいるのだろう…というほどの人気ぶりでした。
明日海りおのトップスター在任期間
通常、トップスターの在任期間は3年くらいが一般的とされています。
本公演の数にしたら5~6作品程度。
しかし、明日海さんは2014年に花組トップスターに就任し、2019年に退団するまで約5年半にわたり、トップスターを務めました。
本公演の作品数は10作品。
平成以降3番目に長い在任期間でした。
ちなみにもっとも長かったのは宙組・和央ようかさん、続いて星組・柚希礼音に次ぐ3番目となりました。
その間、相手役を務めた娘役は4人。宝塚史上最多記録です。
明日海りおの歌・ダンス・芝居の質と宝塚らしい男役像
明日海さんは、なかなか3拍子そろえることが難しいと言われる、歌・ダンス・芝居のクオリティが高かったことも特徴です。
さらに、宝塚への愛が深く、男役を追求し続けてきた明日海さんの作り上げる男役像は花組の伝統的な男役でもあり、新しい男役像でもあったように感じます。
宝塚の【男役】という伝統を守りつつ、幅を広げた功労者とも言えるでしょう。
その確かな技術と探求心、絶対に妥協しないストイックな表現者としての姿は、舞台上だけではなく、宝塚の生徒としての模範となるような存在でもあったのでしょう。
これからも、この愛する舞台に花を咲かせていく仲間たちが…恥ずかしい思いをしないよう…卒業生として、清く、正しく、美しく…生きてまいりたいと思います。
明日海りお退団挨拶より
明日海りおのために作られた準トップスターという肩書
明日海さんが月組時代、「準トップスター」という肩書が作られました。
トップスターでもなく2番手でもない「…準トップ?」
困惑したファンも多かったと思いますが、おそらくは明日海さんご自身も困惑したかもしれません。
「大劇場でトップと同じ役を担える存在」と説明されたという準トップ。
【準トップスター】はまさに明日海さんのために作られた肩書と言っても過言ではなく、当時トップスターだった龍真咲さんと主役を役替わりで演じるという宝塚のトップスター制度の根幹を揺るがすような事態に、少なからず非難の声も向けられました。
しかし、そのような制度が出来てしまうほど、明日海りおという存在は、何か特別だったということでしょう。
あとになって、準トップ時代を「昼はロミオ、夜はティボルト。今考えたらものすごいことをやっていた」と振り返りながらも「あのとき頑張れたからこそ今がある」と話している明日海さん。
通常考えられない主役の役替わり経験は苦労や不安と戦いながらも、得たものも多かったのでしょう。
明日海りおの宝塚初となる横浜アリーナでのコンサート
退団が発表されたあとの2019年6月、横浜アリーナでコンサートを行いました。
通常、トップスターが退団を発表したあとにコンサートやディナーショーなどを行うことは多いですが、アリーナのような大きな場所でのコンサートは非常に珍しいことです。
明日海さんの前に「トップオブトップ」と呼ばれることが多かった柚希礼音さんが武道館でのコンサートを行ったことも話題になりました。
武道館と横浜アリーナ、どちらも有名なアーティストがコンサートをする憧れの場所でしょう。
キャパは武道館が約14000、横浜アリーナは約17000とどちらも劇場とは桁違いの大きさですので、「会場が埋まるか心配だった」と不安もあった明日海さんですが、不安をよそにコンサートはチケット争奪戦となりました。
明日海りおの千秋楽に劇場に集まった人数とライブ中継
明日海さんの退団公演の千秋楽は、全国、海外合わせて189か所の映画館でライブ中継され、宝塚史上最多となりました。
中継する映画館を追加しても「チケットが買えない…」というファンたちの嘆きが聞こえてくるほどの人気ぶりは、まさにトップオブトップと言えるでしょう。
さらに、千秋楽終演後に東京宝塚劇場に駆けつけたファンの数は約10000人らしく、その数も桁違いでしたね。
明日海りおの魅力と宝塚に遺したもの
ここまで、明日海りおさんの「トップオブトップ」と言われる所以を見てきました。
絶大な人気を誇る平成を代表するトップスターだったということを改めて知ることができました。
では、どうして、これだけ多くのファンが明日海さんに魅了されるのでしょう。
美しい容姿、美声、演技、ギャップ…。
十人十色の答えがあるのでしょうが、わたくし、きりん。が思う明日海さん最大の魅力は…
【明日海りおの変化の幅と美しさ】
この【変化】とは、役との関わり合い方なのですが、役を自分側に引き付ける表現と役に近づいていく表現など色々あると思いますが、そのさじ加減が絶妙。
特にトップスターになってからの明日海さんは、ご自身が公演ごとに変化というか、進化していく姿に正直驚きながら観ていました。
というのも、正直こんな感覚を自分自身が持つようになるとは想像していなかったからです。
少し前の明日海さんに対しては大変失礼ながら「文句なく美しいんだけど、どの役をやっても似たり寄ったりに見える…」というイメージでした。
いつも「美しい明日海りお」という印象が、あまり変わることはなかったのですが『ロミオとジュリエット』あたりからしだいに印象が変わっていった記憶があります。
美しい彫刻だったのに、血の通う人間として見えるようになったような感覚…。
その後の『春の雪』以降の変化からも、役替わりで得た何かが客席に届くようになったのかもしれません。
それ以降の明日海さんの変化のスピードは、目を見張るものがありました。
「美しさ」も、その昔感じていたような見た目の美しさではなく、舞台の上で役として生きることの美しさに変わり、魅了されました。
『金色の砂漠』の悲しみと憎しみ、愛と儚さという複雑な感情表現がとにかく絶妙で魅了されました。
『A Fairy Taleー青い薔薇の精ー』は持ち味に頼りたくないと仰った明日海さんの情熱を強く感じるエリュでした。
明日海さんの宝塚人生や作品から、与えられたものに満足しないストイックさと情熱を強く感じます。
高い人気はあくまで結果であって、そのような宝塚の男役としての、さらには表現者としての姿をここまで体現したということこそ、トップオブトップと言われる真の所以なのではないかと思います。
まとめ
ここまで明日海りおさんがトップオブトップと言われることが多かった理由と明日海さんの魅力について見てきました。
まとめると・・・
◆トップオブトップとは、宝塚の特定のスターを指す表現ではなく、メディアが作った表現
◆宝塚のトップスターは平等という前提はあるものの、トップオブトップと呼ばれるトップがいるのは事実。
◆人気、在任期間、アリーナでのコンサートなどの別格感などが主な理由
◆明日海りおは人気や在任期間などからトップオブトップと表現されることが多かった。
◆明日海りおの魅力は多くあるが、役への向き合い方と表現力、さらには宝塚の男役・表現者としての姿勢こそがトップオブトップと言われる真の所以であると考える。