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紅ゆずるは歌下手すぎる悲惨なトップなのか?退団公演で答えが出た!

元星組トップスター・紅ゆずるさんの「下級生時代、舞台の端がわたしの定位置だった」という言葉が心に残っています。

トップ就任当初から、紅ゆずるさんに対して

「下手すぎる」
「悲惨なトップ」
「ああいうトップは宝塚にいてほしくない」

など、心ないバッシングがあったことは事実でした。

はたして本当にそうだったのでしょうか?

宝塚ファンは昔から色々な部分で熱いので、それなりにバッシングがあるのは珍しくありません。

ただ叩かれやすいスターとそうでないスターがいます。

紅さんは好き嫌いがはっきりと分かれやすい個性的なスターため、俗に言うアンチが多いスターだったかもしれませんね。

しかし、紅ゆずるというトップスターが誕生したことで、間違いなく新しい風邪が吹き抜けたことは確かだと感じています。

今回は、紅さんの卒業のはなむけに、紅ゆずるというトップスターに対し思うこと、感じることを書いていきたいと思います。

紅ゆずるが歌も芝居も下手と言われたのは事実

宝塚は歌劇団と名前がつく以上、歌唱力への評価が必ずついてまわります。

紅さんは、決して高い歌唱力に恵まれたスターではありませんでした。

ここ最近の星組トップスターは安蘭けいさん、柚希礼音さん(歌唱よりダンスの人ですが)、北翔海莉さんと感情を歌という表現で届けることのできる、歌唱力に優れたスターが続いている印象がありました。

トップスター就任時は、かなり叩かれていた印象でした。

しかし、これまでの宝塚の歴史を振り返ってみると、決して歌を得意としているトップスターしかいなかったかと言えば、まったくそんなことはありません。

むしろ、「紅さんより下手でしょ…」というスターもトップになっています。

宝塚とは、そういう場所。

どういう場所かというと、スターであることが第一優先と言える場所です。

紅さんは歌唱力を補っても余りあるものを持っていました。

それが宝塚で必須とされる・・・

抜群のスタイル
スター性

そして

個性的で面白いトーク力

宝塚においては、歌、ダンス、芝居などの1つ1つの要素は出来ることに越したことはないけれど、すべてできることが必要不可欠ではないという独特の文化が存在しているように感じます。

紅さんは、宝塚だったからこそ、独自の個性を最大限生かすことができたスターだと言えるでしょう。




紅ゆずるは悲惨なトップスターだったのか?

いまだに、検索エンジンには「紅ゆずる」「トップ」「悲惨」という文字が出てきますね。

そのくらい検索されたということですから、一定数の宝塚ファンが「悲惨なトップ」だと感じていたことに違いないでしょう。

正直なことを言うと、わたし自身、2番手時代までの紅さんについては、悲惨とまでは思っていなかったものの、そこまで期待してませんでした。

歌も演技も、これといって目を引き付けるものを見出すことができなかったからです。

公演ごとに紅さんがどんな役かが発表される度、その役を演じる紅さんを難なく想像できてしまって、実際に観劇しても想像を超える姿を見ることができなかった

当然、トップになるスターさんだとは思っていましたので、トップ就任に反対とまでは思っていませんでしたが、「あくまで想像を越えないトップスターになるのだろうな」と思っていました。

それが、まったく見当違いだったと気づかされることになろうとは…。

紅ゆずるはトップスターになって輝くタイプ

紅ゆずるは、トップスターになってから、大変身を遂げた貴重なスターだと思います。

宝塚のトップスターは3種類のタイプがあると思っています。

2番手時代が絶頂期で、トップになって不発に終わるタイプ

2番手までは微妙だけど、トップになって大変身を遂げるタイプ

2番手時代以前から変わらない実力が持続している安定タイプ

わたしの中で、紅さんは断然②の大変身タイプです。

そして、②のタイプのスターさんの方が、退団後もファンの記憶に残る素晴らしいトップさんになるのだと思います。

③の安定タイプは下級生時代から歌、ダンス、芝居3拍子揃っていると言われ注目されているスターに多いタイプ。

もちろん、成長が止まっているわけではなく、以前からクオリティの高さが際立っていたスターのことです。

すでに、実力を発揮しているので、ファンの方もハードルを上げて見てしまうので、トップに就任後、大爆発や大変身とはいかないまでも、いつ見ても安心できる貴重な存在でもあるのです。

現在のトップで言えば、望海風斗さんが③のタイプかなと思いますし、礼真琴さんも比較的③タイプと言えるでしょうが、まだ未知数ですね。

では、紅さんがトップになって、大変身にいたるターニングポイントとなった作品は何だったのでしょう?




紅ゆずるの主演作品

まずは、紅さんのトップ就任後の作品を見てみましょう。

『オーム・シャンティ・オームー恋する輪廻ー』【トップお披露目】

『THE SCARLET PIMPERNEL』 【大劇場お披露目】★

『ベルリン、わが愛/Bouquet de TAKARAZUKA』★

『うたかたの恋/Bouquet de TAKARAZUKA』

『ANOTHER WORLD/Killer Rouge』 ★

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀/Killer Rouge/星秀☆煌紅』【台湾公演】

『霧深きエルベのほとり/ESTRELLAS~星たち~』 ★

『鎌足−夢のまほろば、大和し美し−』

『GOD OF STARS-食聖-/Eclair Brillant』 ★

★=本公演

一覧にしてみると、紅さんは作品に恵まれていますね

やはり、トップスターになると、あて書きをしてもらえたり、主演に合った作品が上演されるようになることが、2番手時代と大きく異なる点でしょう。

この特権を生かして、最大限自分の魅力を出し切ることができたことこそ、紅さんの成功のポイントだったのでしょう。




紅ゆずるが大躍進を遂げた3作品

紅さんが大変身を遂げた作品は3つ。

【第3位】 『THE SCARLET PIMPERNEL』

【第2位】 『ANOTHER WORLD』

【第1位】 『霧深きエルベのほとり』

この3作品をまさにホップ・ステップ・ジャンプ!!!と飛び越えてきたことで、見事な変身を遂げることに成功したのだと思います。

どれもまったくテイストに異なる作品。

『THE SCARLET PIMPERNEL』 は新人公演主演を果たした思い出深い作品。

この作品がなければ、 紅さんのトップスターへの道はなかったと言っても過言ではありませんね。

何せ唯一の新人公演主演作品ですから。

これまでのどのパーシーよりおちゃらけて、バカっぽく見えました(笑)

でも、バカっぽさ(失礼)とスカーレットピンパーネルになったときのギャップがすごかった。

そしてかっこよかった!

稽古場では、絶対に苦悩していた時期があったでしょうが、舞台では心底楽しそうに見えました。

そして、宝塚で落語!?と斬新さに舌を巻いた『ANOTHER WORLD』

苦手意識(?)をもっていた谷正純先生から「この作品を紅でやりたい!」と聞かされたときは「え…。なんでわたし…」と頭に「?」が飛び交っていたようです。

『ANOTHER WORLD』は、恋患いであの世へいってしまった青年が、あの世で出会った個性豊かな登場人物たちと旅する痛快エンターテイメント。

紅さんにしか出来ない役どころとまくしたてる関西弁は、宝塚のイメージを180度覆す最高に楽しい作品になりました。

宝塚を観たことがない人に「宝塚には、こういう作品があるんですよ!」とお知らせしたい気持ちになる作品でした。

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そして、最後は『霧深きエルベのほとり』

「紅さんの演技力ってこんなにすごかったっけ?」心底驚かされ、いままでわたしは「一体何を見ていたんだろう…」と自問自答した作品でした。

カールは粗忽で乱暴な物言いをする船乗りですが、宝塚のスターが演じているとは思えないほどの下品さと荒々しさ、そして深い愛情、不器用さ…。

すべてが混ざり合った紅さんのカールは本当に最高でした。

おそらく、トップ就任直後に演じていたら、これほどのカールが出てこなかったのではないかと感じます。

ホップ・ステップとなる2作品があったからこそのカールでした。

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紅ゆずるは退団公演『GOD OF STARS』でまたも宝塚の歴史を変えた

さて、ここまで強烈な個性を武器と作品に恵まれたことで、大きな変身を遂げてきた紅さんですが、退団公演『GOD OF STARS』でも宝塚の歴史に新しい1ページを加えたと言えるでしょう。

サヨナラ公演がまさかの抱腹絶倒コメディになるとは!

25年以上、宝塚を観続けてきたわたしもこれまで見たことがありません。

紅さんと演出家・小柳奈緒子先生は、これまでも相性がいいと感じる作品を作り上げてきましたが、退団公演でもタッグが実現したことにより、これほど笑いであふれるサヨナラ公演となりました。

1つの成功例として前例を宝塚に残したと言えるではないでしょうか。

紅ゆずると出会ったことで・・・

こんな宝塚にこんなトップスターがいたっていい!

こんなに笑って楽しいサヨナラ公演があってもいい!

ファンにとって、新しいボールを受け取った気持ちになるスターでした。

そんな表現ができる紅さんですが、最初から自分の魅力に気付いていたわけではなかったようです。

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紅ゆずるの魅力は苦労人だからこそ分かる気持ちを忘れなかったこと

宝塚が好きで好きで、宝塚愛がとにかく強いスターですので、当然のことながら宝塚らしい男役を目指していたようです。

しかし、どうにもこうにも紅さんのまとう空気が個性的で、どう頑張っても紅カラーを隠し切れないと気づいたとき、苦労した時間は長かったように感じます。

冒頭の「舞台の端がわたしの定位置」という言葉からも分かるように、下級生時代は目立つ役がつかず、入団6年目までロケット(ラインダンス)をしていた紅さん。

新人公演主演1回という経歴で、トップスターになった人は紅さんを合わせて5名だけ。

まっしぐらにスター街道を進んできたスターには見えない景色をたくさん見ているだろうし、感じられない気持ちをたくさん味わってきていることでしょう。

だからこそ、番手スターになってもトップスターになっても、舞台の端にいる生徒の気持ちまで分かっただろうし、当時の気持ちを忘れなかった人にしかできない気づかいができる人間性こそ、紅ゆずるさんの大きな魅力だと感じます。

『霧深きエルベのほとり』で、カールがマルギットの家で婚約発表を行ったとき、カールがわざと下品に振る舞うシーンがありますが、あの場面の紅さんの演技は素晴らしく、心が震えました。

下級生時代に経験した、悔しさ、反骨精神が血肉となって生み出されたような演技でした。

どんな経験も、糧としてアウトプットできる力もまた、紅さんの魅力なのでしょう。




まとめ

ここまで紅ゆずるというトップスターについてわたしなりの感じたことを書いてきました。

まとめると・・・

◆紅ゆずるの歌唱力は決して高いとは言えない

◆紅ゆずるは宝塚歌劇という文化の中で成功したスター

◆紅ゆずるはトップスターに就任して大変身するタイプだった

◆紅ゆずるが大変身を遂げた作品が3つある

◆紅ゆずるは退団公演で宝塚に残すものは想像以上に大きい

◆紅ゆずるの魅力は【過去】を糧にしてアウトプットする力

きりん。
きりん。
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