2019年10月13日、星組トップスター・紅ゆずるさんが宝塚を卒業しました。
台風の影響で前日12日は公演中止となり、涙を飲んだファンがどれほどいたことでしょう。
わたしもその1人…。
しかし、13日は天気も回復し、千秋楽の幕が開きました。
交通機関の乱れが残る中、日本中(海外もかな?)のあらゆるところから、乗り継いで乗り継いで、東京宝塚劇場やライブビューイング会場にたどり着いた人、たどり着けなかった人…。
様々な感情が渦巻く千秋楽になりましたね。
わたくし、きりん。は、これまで25年以上宝塚を観劇してきました。
その中で、数々の退団者の皆さんの挨拶を聞かせてもらいました。
その中でも、本当に心に残った素晴らしい挨拶だったと感動してやまない、紅ゆずるさんの退団挨拶、そしてカーテンコールの言葉や様子。
これは、「絶対に残して形におきたい」と心から思う内容でした。
それでは、はじめます。
目次
紅ゆずる最後の大階段の様子【東京・千秋楽】
組長の万里柚美さんと組子全員から「さゆみさーん!」と呼ばれ、「はい!」と少し高めな紅さんの声。
様々な肩書を背負う紅ゆずるではなく、「宝塚の1人の生徒」としての紅ゆずるの声でした。
『すみれの花咲く頃』が流れ、大階段の一番上の段を中央まで歩き、中央で正面を向き、一呼吸おいて、暗い階段を静かに一歩一歩降りてくる紅さん。
これまでの宝塚人生を歩んできたその足で、最後の大階段の感じながら、ゆっくりと…。しっかりと…。
17段降りたところで、パッと照明がつき、その場で一礼。
いったい、どれだけの回数、すべてを吹き飛ばすような強烈な宝塚の照明を浴びてきたことでしょう。
頭を下げてた紅さんは、そのすべてを味わっているように見えました。
再び、階段を降り始め、上手、下手、再び上手に視線を送り、舞台中央へ。
万里さんの「星組からと、同期生からのお花でございます。同期生からのお花は、元宙組トップスターの朝夏まなとが駆けつけてくれました」
と紹介がありました。
紅ゆずるへお花渡しー朝夏まなと&礼真琴ー
下手より、白い薔薇(?)の花束を持った朝夏まなとさんが登場。
黒いスーツの下には赤い柄シャツという出で立ちでした。
紅さんは、朝夏さんの方を笑顔で見つめていました。
最初に上手より、次期星組トップスター・礼真琴さんが同じく白い薔薇(?)の花束を紅さんに渡します。
一言とともにおじぎする礼さんに優しく微笑み返す紅さん。
そして、下手より朝夏さんがお花を渡します。
朝夏さんと礼さんからのお花が真ん中で合わさって、1つの大きな花束となります。
朝夏さんは、紅さんの耳元でおしゃべりされていました。
何をお話になったんでしょうね?
音楽学校時代の思い出でしょうか?ねぎらいの言葉でしょうか?
紅さんはその言葉にうんうんと頷いたり、クスクス笑っていました。
礼さんが少し先に上手の自分の場所に戻り、しばらくして朝夏さんも下手で一礼。
紅さんとアイコンタクトして「じゃあ」というかんじに少し頷いて、拍手を浴びながら幕へ。
朝夏さんが退場されるのを、しっかり見届けた紅さんは、その後マイクの前まで歩き、一礼ののち、挨拶を始めました。
紅ゆずる退団挨拶(全文)ー東京千秋楽ー
最初の目線は、客席前方。
その後、挨拶をしながら、客席奥や上手、下手をまんべんなく眺めながら語っていました。
とうとう……、宝塚を旅立つときがやってまいりました。
宝塚人生のゴールへ……、見えるものが…こんなにもきれいなものだとは…わたくしは想像ができませんでした。
今まで過ごしてきた時間は、この瞬間のためのものなのかもしれないと……、今感じています。
出演者…、スタッフ…、そしてお客さま……。
宝塚を心から愛する人々が集うこの場所が……わたくしは大好きです。
一度きりしかない人生の中で……、心が震えるほど……愛する場所で過ごすことができたわたくしは…、本当に幸せ者です。
この場所が大好きだから……、この場所で起こる奇跡を信じているから……、1人きりでは乗り越えることができない壁も…乗り越えることができました。
この美しい宝塚が……いつまでも……、いつまでも永遠でありますように……。
今まで本当に……ありがとうございました。
1つ1つの言葉には、紅さんの魂がこもっていました。
本当に宝塚が大好きなんだな…。
本当に奇跡を信じていたんだな…。
何の疑いもなく、その言葉の数々が、観ている側の心に届いていると感じました。
最後に深々とおじぎをして、挨拶は終了でした。
最後の曲は『FOREVER TAKARAZUKA』
退団者5名と星組生が最後に一緒に歌う曲は『FOREVER TAKARAZUKA』
5人で最後の銀橋を渡ります。
銀橋の中央で、紅さんは涙をこらえながらも、笑顔で客席を見渡していました。
紅ゆずるカーテンコールの言葉
退団者5名が一言ずつコメントします。
如月さんの「もうー!さゆみさんが卒業してしまうと思うと、ちょっと悲しいんですけど…!」という言葉に
「いやー、あなたも卒業するの!」
と、いつものツッコミが戻り、少し和やかな様子になりました。
このような愛にあふれた…このような空間は…、他にないと思います。
ですのでいま…、本当に…、いま、あーちゃん(綺咲愛里)が言いましたけれども、あの、目に焼き付け、そして体で感じて…、これを…幸せを、いましみ込ませている途中で…ございます。
(中略)
笑顔で、と言いながらちょっとしんみり系になっておりますので…、元気にいきたいと思います!
本日は本当ありがとうございました!
紅ゆずる&綺咲愛里
紅ゆずるさん&綺咲愛里さん2人での言葉。
紅「では、あーちゃん。まだまだ申すことは…、いっぱいございますでしょう。どうぞ」
綺咲「いえいえいえ…」
紅「どうぞ!」
綺咲「さゆみさんが…ご卒業されてしまうのが…」
紅「いやいやいやいや…」
綺咲「わたしも常々…」
紅「如月病がかかってるよ」
綺咲「あの…うつってます。あの、本当に…自分のことより…さゆみさんが、もう宝塚から卒業してしまうということで、いつも頭がいっぱいなのですが…」
紅「いい子やなぁ…」
綺咲「でも、こうしてご一緒させていただけて…。心から!幸せです!本当にありがとうございました」
紅「いやいや、こちらこそ、ありがとうございます」
本当にお二人の様子は、かわいらしく微笑ましく、観ているこちらも微笑んでしまいました。
紅ゆずる宝塚史上初の言葉とは?
わたしが紅さんの挨拶の1番感動した場所がここ!
そして、紅ゆずるの人間性に改めて惚れ直した瞬間でもありました。
あのー、わたくしはいつも…、公演中に、パレードのときもいつも思っていることがございまして…、それを口にしてみたいと思います。
あの、この場所からならば…(泣)
泣かないようにしてたのに…。
届くのではないかと…思いますので…、すいません、この場をかりて…。
小林一三先生!!!
宝塚歌劇団を作ってくだいまして、本当に…本当にありがとうございました!!!
(おじぎ)
これまで数々の退団挨拶を聞きましたが、小林一三先生にお礼を言った人はいなかったです。
(たしか、専科の汝鳥伶さんも同じことをおっしゃっていました)
「常々思っていた」というから何かと思えば、小林先生への感謝だったなんて…。
紅さんの【人間性】が、この一言ですべて現れているのではないかと感じます。
感謝を忘れない人なんだな…と。
サヨナラショーで、紅子として登場した紅さんが、オケピの人たちがハンカチやうちわを振りながら、盛り上げてくれたことを話していました。
観客が、まず目にすることの出来ない光景。
舞台に立っている側の人が言わないと絶対に知り得ないこと。
きっと紅さんは、オケピの人をはじめ、スタッフの人を優れた観察眼でしっかり見ていて、いつも感謝していたんだろうなと思います。
それを観客にも伝えられる手段の1つが「紅子」というキャラクターだった。
古来より「以心伝心」いう言葉がありますが、やっぱり…
言わないと伝わらない!
忌憚ない意見を言い合える星組という環境で育ったことと、3分も黙っていられない明るい関西人気質の紅さんだからこし、「人に伝えてなんぼ」という考えを体現されていて、それこそが紅ゆずるの大きな魅力の1つだと感じます。
宝塚歌劇団の生徒だから、舞台人だから、歌、ダンス、芝居の技術は当然評価される世界。
紅さんは、決してすべてに秀でた才能を持つ舞台人ではないかもしれませんが、この人はやっぱり【心】の人だな…と。
心で人の心を動かせる貴重な存在だと。
そして、「技術より心が勝るときがある」ということを紅さんの姿を通して教えてもらいました。
それも、最高の形で。
もちろん、紅さんに技術がないと言っているわけではありません。
「自分は下手だから、何回もやらないとできない」とトップスターの身でありながら、隠さずに言える人間性…。
もちろん、死ぬほど努力したからこそ言える言葉でしょう。
わたしが大好きなシーンである『エクレール・ブリアン』のフィナーレの群舞。
紅さんの周りでは、もっとかっこよく上手に踊っている男役がいることは確かなのですが、紅さんの【心】が…【思い】が…、あの場の音楽、空気と溶け合って、客席にバシバシ届く。
だから、観ていて涙が出るんです…。
宝塚の舞台で、こんなに心を動かされている自分に久しぶりに気付いた瞬間でした。
いや、初めてといってもいいかもしれない…。
それほど、紅ゆずるさんは魅力的な【1人の人間】にわたしにはうつりました。
紅ゆずるの人間力があふれる言葉が止まらない
星組生が舞台に再び集まったあとにも、紅さんの小林一三先生への思いは続きます。
小林一三先生がいらっしゃらなければ、宝塚歌劇団というものは…ないわけでして…、そして今までの諸先輩方、そして先生方。
宝塚に携わってくださいました色々な上級生の方々から、わたくしたちは、いま、舞台に立たせていただいております。
この感謝の気持ちを込めまして、ずっと忘れずに…。これから舞台に立つみんなも…絶対に忘れることなく…、これからの宝塚を引き継いでいってほしいなと…思います。
そして、お客様も…宝塚をずっとずっと愛してくださいまして、本当にありがとうございます。
本日は本当にありがとうございました!
紅ゆずるがものすごく寂しいこととは?
1人で舞台に立つ紅さんの言葉。
この舞台に…どれだけ夢を見たか……。
いま、とても考えています。
いつも思い出します。
そして、本当に…この大階段…、この…本当に…舞台の端でもいいから、立ちたいと思っていた自分が…、昨日のことのようで…、全然忘れることができず…、毎日本当に幸せだな…とかみしめながら舞台に立っておりました。
宝塚というところは…本当に…なんというんでしょうか……。
本当に……「幸せ」という言葉では語りつくせないほどの・・・愛が満ち溢れているとよく言いますけれども、本当に…こんな場所は…もうないんじゃないかと…本当に思います。
ですので、わたくしも…明日から…タカラジェンヌ…「元」…ってつくんですけど…、それがもう…寂しくて寂しくて…
元タカラジェンヌ…っていう…
これは一体…どうしたらいいのかというところではございますが…
これからも宝塚を愛し続ける1人でいたいなと思っております。
(中略)
再び星組生が集まった舞台でも、一三先生への愛が爆発する紅さんが本当にかわいらしくて素敵でした。
わたくしの中の想像の中の一三先生は…いつも笑って…
「うんうん」って言ってくださっているんじゃないかな…って思ってるんですが…
どうですかーー!!
一三せんせーい!!!
……好きです。
本当に…、本当に……。
宝塚を作ってくださって…本当に…ありがとうございました。
そして、お客様。
本当に…大変な中、本当にここまで来てくださいまして…、そして忘れちゃいけないライブビューイングの皆さま…。
いま…、わたくしは「泣かない」と言ったのに泣いて…ひどい顔でございましょう。
ですが…ライビビューイングの皆さま…、宝塚って本当に…素晴らしいところですよね…?
ずっとしゃべり続けちゃいそうなんで、そろそろ切りたいと思います。
本日は本当にありがとうございました。
紅ゆずるー緞帳前で綺咲愛里への愛を語る
最後のカーテンコールは緞帳前です。
そこで、綺咲愛里さんと2人で登場した紅さんは、「真ん中まで行こう」と舞台中央まで移動。(通常は舞台端が多いのです…)
そこで語ったこととは?
紅「こんなに……かわいいなって思わせてくれる…相手役って…わたし…わたしにはもう…綺咲愛里しか…いません!」
紅「で…」
綺咲「わたしは!」
紅「ん?…うん!」
綺咲「さゆみさんが…いなかったらここにはいません!」
客席から「投げキスして!」という声に綺咲さんは「さゆみさんにですか?」と。
「違うと思う!」と紅さんは客席を湧かせていました。
そして・・・
最高の…最大の・・・愛を込めまして…
投げキスさせていただきます!
いっせーのーで!
と、2人で大きく投げキスを客席へ。
終演後の記者会見も笑いに包まれる紅語録が!
終演後の記者会見では・・・
・サヨナラショーについて
・星組生へ伝えたこと
・俳句で今の気持ちを
など、様々な質問が飛びました。
「サヨナラショーはお客様に笑顔でいてもらいたい」という気持ちを込めて、最後の曲(ANOTHER WORLD)は決めていたし、異例の(?)5分もしゃべり続けるという…、紅子のシーンも入れました」
「紅子はお客様に笑顔でいてもらえる、わたしの方法、手段、武器というか…」
と紅子を登場させた思いも語っていました。
そして、星組生へ伝えたことは「宝塚を目指したいと思ったときの気持ちを忘れないでほしい」ということ。
紅さんはご自身の過去の感情をとてもよく覚えているようで、宝塚を目指したときの気持ちをずっと新鮮なまま保ち続けたことで、苦しいとき、壁にぶつかったときも乗り越えられてこられたのでしょうね。
最後に今の気持ちを俳句で表すと…?という質問に(紅さんの特技は俳句!)
宝塚 あぁ宝塚 宝塚
と詠んで、会場を笑わせていました。
うーん、深い!!
さいごに
ここまで、紅ゆずるさんの東京公演千秋楽の退団挨拶やカーテンコールでの言葉をまとめて見ていました。
どれも、宝塚と宝塚に関わる人、観客やファンへ対する愛情と感謝が詰まった素晴らしい言葉だったように感じます。
「にじみ出る人間性が最大の魅力のスターさん」
というのが、わたしの紅さんへの思いです。
千秋楽のデュエットダンスのラスト、銀橋で綺咲さんに「ありがとう」とささやく紅さん。
涙を流しながら、紅さんに寄り添う綺咲さん。
お二人の姿に、心が震えました。
紅ゆずるさんには、本当にたくさん笑わせてもらって、たくさん泣かせてもらいました。
宝塚ファンの1人として、紅さんが卒業してしまった今、とてもとても寂しいですが、きっとまた別の世界でも紅さんの姿を見ることができると信じています!
本当にお疲れ様でした!
そして、たくさんの愛をありがとうございました!